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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく
「……」
「……」
暫しその時の想いを噛み締めるようにし、それから木織は手にしたカードを掌で優しく撫でながら言った。
「あの瞬間、この一枚のカードはね――私の心にできたひび割れた場所に、ピッタリとはまってくれたの。まるでパズルの、最期のピースみたいに……」
そうだったのか……。僕の知らないそんな想いがあったから、木織は僕のことを……。
ともかく、僕の渡していたカードが、期せずして木織の『お守り』となった経緯はわかった。だけど、そうなると――
「その話が、どうして、その……クレーム処理に?」
見つめてそう訊ねた僕に、そっと笑い返し――
「それはつまり、コレはもう役に立たないから」
木織はそう言って、僕にそのカードを差し出した。
「え……?」
「返すわね」