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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく
「……」
僕は呆然としたままそれを受け取り、それから木織の真意を察して静かに肩を落とした。
そうだよな……。あんな風に木織に甘え続けた僕が、これで少し立ち直ったとしても、今更どうやって……。
「もう、いらないんだね……?」
「そう、いらない。だから――」
え……?
木織は不意に手を取り立ち上がると、少しだけ低い視線から、僕を見つめて――言った。
「新しいの、探して」
「新しい……の?」
「だって、色々あったもの。私の心にしたって、もっと複雑にひび割れてしまってるわ。とっても歪な心の隙間――それに合う新しいピースが――また、欲しい」
「それは……僕で、見つけられるの、かな?」
「わからない。でも、ね――」
「……?」
「私は、貴方に見つけてほしいと――想ってる、よ」
そう言って夕陽に揺れた瞳に、僕はこの胸を熱くしていた――。
【それは歪であるが故に、何物にも代えがたく――――おわり】