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訳あり探偵事務所『Grayer』
第3章 分岐点

「あなたの…せいで……」
不満を堪えるのは、今の私には出来なかった
「大事な、大事な公務員の面接…
受けられなくなったんだから……!」
そこで抑えきれず涙が溢れる
「なっちょ、あぁ…」
琉牙はうろたえる。 ハッとすると徐にバッグを漁り
厚めの封筒を取り出した
「これ、もしかして」
取り出したのは、いくつもの書類が入った封筒
それは、私が落とした大事な物だった
「うぅ……書類……」
大粒の涙が溢れ、水の屈折で揺れ動く瞳に移る
既に死んでしまった未来……の封筒。
「もしかして、この中、あの部署の面接書類が入った封筒なのか」
慎は琉牙を睨みつけ震えた声で吠える
「そうよ!!大事な、大事な面接だったのに!
あなたのせいで、全部、全部が水の泡に…」
そこまで言いかけるとまた私は泣き出した
「…………」
同情をする素振りは見られなかった
別に同情なんかされても…何も変わらない
虚しいだけだけど……
所詮は、他人事だもんね……
慎は無言で佇む琉牙から視線を逸らすと
ゲームセンターへのドアへと手をかけた

