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蒼井シリウスさんの日記

ブックレビュー『言葉にして伝える技術』
[作成日] 2015-07-30 12:00:30
著者はあのソムリエの「田崎真也」氏です。
この本のサブタイトルは「ソムリエの表現力」。
氏はまず、現代人の、味わいを人に伝える表現力の無さを指摘します。

例えば
「クセがなくて、おいしい」「食べやすい」「飲みやすい」
という表現です。

おいしさに対する表現として、これを使うのは日本人ぐらいしかいないと、氏は断言します。
少し抜粋します。


フランスのワイナリーを訪問して、生産者から「うちのワインはいかがですか?」と聞かれたときに「飲みやすいですね」と答えたら、満足する生産者は皆無でしょう。
生産者たちは飲みやすいワインを造りたいと決して思っていないからです。
醸造家は、その土地の個性を反映したもの、自分らしさがしっかりと発揮されたものを造りたいという志があるからこそ、ワインを造っているわけです。
そうゆう人たちに向かって「飲みやすいですね」のひとことで済ませてしまうのは、その存在価値を否定することになると思うのです。


クセがない、食べやすい、飲みやすい、という表現は褒め言葉ではないのです。
実はこれ、一生懸命作った人に対しては禁句なのですね。
勉強になりました。

氏は次に、どうやって味の表現を言語化するかを、ソムリエ修業時代の経験談を交えて、説いていきます。
それで驚いたのは、ワインの味わいを表す言葉は、ソムリエ自身のオリジナルな表現で覚えるのではなく、万国共通の語句があるというのものです。

例えば「熟したパイナップルと干しアンズ、蜂蜜の組み合わせ……」など、他の人がそれを飲まなくても、言葉だけでどのような味わいであるか、わかるようにしているのです。

氏はこう言います。
「自分以外の人と意味を共有するためには、なぜその表現を使うのか、その理由を明確に言えることがとても大切なことです。
そしてその理由を伝え、相手が納得し、認めてもらうことではじめてその表現を共有できるのです」

日本人は「みなまで言わずとも、わかるだろ?」という風潮がありますが、実際はなにも伝えていないことが、よくわかります。

今の国内外の情勢、ともすると自分だけがわかる言葉で自分の意見を述べてしまいがちですが、その言葉の意味をまず共有できる環境を作るのが、先決なのかもしれません。

それは文章を書く上でも同じだと感じました。



日記へのコメント

くまさん、はじめまして。
それは恋愛中の男女に良く言えることですね(笑)
自分の最大限の愛情表現でも、それが相手には半分ぐらいだと思われてしまう。
それがお互いそう感じると、すれ違いが起きる。
何事もお互いの表現の意味の共有が、まず先決なのかもしれませんね。
[投稿者]蒼井シリウスさん [投稿日]2015-07-31 07:44:48
すみません。みぃさんに言っているわけではないのですが、ここは公の場ですので、読んでいる方に向けての私の主張でした。
私も一度だけレビューを書いたことがありますが(笑)最後は作者への応援メッセージになってしまいますね。
ここは双方向のやりとりができるので、無意識にそうなってしまうことは否めません。
でもあくまで「ここが面白い!」と声高に言ってもらえた方が作者も喜ぶと思います(自分も含めて)
逆に作者のパーソナリティに踏み込まれると、ちょっと返答に窮することもあります(笑)
真摯なコメントありがとうございました。

[投稿者]蒼井シリウスさん [投稿日]2015-07-30 23:13:01
こんばんは、初めまして。

レビューについてや「表現力の無さ」ではなく、言葉・伝えるに反応しました。

10年前ほどに行った講演でのこと。
それは、『思い込み』についてのことだったのですが、そのなかで「人は、相手に伝えるときに100%ではなくても80%ぐらい伝わっているだろうと思う。しかし、相手には(100%のうち)60~70%。または、その以下でしか伝わっていない。それは、伝える側が伝わっているだろうと思い込んでいるから」
というようなことを言っていました。
そのときは「へー。ほぉー」ってカンジで聞いていて。
でも、ブックレビューを読んだとき、そのことを何故か思い出しました。
[投稿者]さん [投稿日]2015-07-30 23:07:27

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