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　ある深夜、一人の女が出頭した。


　彼女は、自身の配偶者を手にかけて、肉体のあらゆる部位を無惨に破壊したという。


　海を彩る珊瑚のように愛らしく美しい女は、取調室にて検事官に、自身の半生を語り出す。


「あたしに愛する人がいたのは事実です。良人にも、この世で最も自然に反するかたちを以て、愛する人がおりました。彼女はあたしの宝石でした」…………



　

　良妻賢母を絵に描いたような若妻、通称･宝石。

　彼女は市議会委員の良人と彼の連れ子の三人で、窮屈ながらに裕福で穏やかな家庭を築いていた。

　ある日、彼女は珊瑚という女と出逢う。

　どこか世界を忌み嫌ったような珊瑚は、生きる意味を探し漁るようにして、女達との淫らごとに耽る日々を送っていた。

　そして宝石も、華やかで自由奔放な彼女の遊び相手として目をつけられる。


「ところで、私、大事なことを訊き損ねていたわ。貴女のご趣味」

「ないけど」

「最初の日、仰ったじゃない。お仕事の他に時間を費やすものを見付けられたから、寝不足になったんだって」

「こういうことを、しているの」



　境遇も精神も真逆の二人は、やがて魂まで溶け合うほどの愛に身を焦がしていく。