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eyes to me~私を見てsecond―愛は無敵―
第7章 揺れる夜
「ハイネケンと……ノンアルコールのカクテルを」
階段を下りた先にあったのは60年代のアメリカを思わせる雰囲気のワンショットバーだった。
今時見掛けないような見事なリーゼントのバーテンがニヒルに口元を歪めて無言で頷き、後ろの棚に無数に並ぶ形も色もとりどりの瓶を幾つか取り出してシェイカーに注ぎ肩の上で振り、華奢なグラスに夕焼けみたいな色の液体を注ぎ、カットされたオレンジを飾って桃子の前に出した。
一連の動作がまるでマジックショーを見ている様に流麗で、桃子は感嘆して拍手する。
バーテンは小さく会釈をし、由清にハイネケンの瓶とグラスを差し出した。
「ありがとう」
バーテンの強烈なキャラクターと、由清の初めてこの店に来たとは思えない堂々とした振る舞い、店内に流れるオールデイーズのナンバー、そして目の前にある美しい色のカクテル――桃子は酒を飲んでいないのだが、すっかり雰囲気に酔ってしまっていた。