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TORTURE −対女性拷問者−
第10章 逝き地獄
私の前を、彼が歩いている
どんなに会いたいと願ったか
彼の長い黒髪が風にたなびき、その度に流れてくる少し甘い香り
“ああ、なにもかも懐かしい……”
声をかけてしまおうか
“でも、きっと仕事よね”
そんなことを思って、綺梨は暗がりから彼を見つめるしかなかった
“ん……?”
彼についてどんどんと人気のない方に進むうち、綺梨はあることに気がつく
“麗夜の前にずっと同じ女性が……あの人を追ってるのかしら”
女が角を曲がり、店の中に入った
すると案の定、彼はその店の前で立ち止まり、じっと中を窺っている
−−−ふと、その冷たく美しい横顔が此方を見た気がした
“気づかれた!?”
慌てて隠れる綺梨
“あ、相手は麗夜なのに、私ったら何をそんなに焦って……”
自分の行動が馬鹿馬鹿しく思えて、ゆっくりと物陰から顔を出す
“!?”
「いない……!」
この数秒の間に、一体どこへ消えたの?
その時、焦る綺梨の背後に人影が−−−
「おい」
「!?」
“誰かにつけられてるな……”