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戦国×ミュージック
第3章 毛利ハーモニー
『トイレの紙様』
毛利隆元は非常に父親想いの息子である。機密保持のため返すよう言われた元就の手紙を返さず、御守りとして持っていたほど深い親子愛を抱いていた。
「父上、ご安心を。僕は父上の手紙、毎回きちんと目を通しています」
「隆元……ワシの隆元ぉー!」
「燃やせと言われても燃やさず、返せと言われても返さず、常に身に付けております」
「え? あー……ありがたいけど、ちょっとそれは、困るぞー……」
「溜まり溜まった手紙は、懐に入れれば防弾チョッキ代わりにもなります! 今の僕は、火縄銃だって怖くありません!」
「いや、隆元? 手紙って、スパイにとってはとっても大事な品なんだよ? 内容を盗み見られるのはもちろん、筆跡を真似されたり、花押を偽造されても困るし」
「最近は父上の手紙を皆にも知って欲しいと思い、手紙の事を歌にしてみました!」
「いやいや、歌うなー!! 国家機密だぞそれ!」
「元春も隆景もよく聞くように、十五分四十三秒の大作ですよ。タイトルは――トイレの紙様」
「結局お前も、ちり紙代わりに使うんかいっ!!」
隆元と父上と手紙、といえば、こんな逸話も。
隆元は厳島神社に「父上がピンチの時は代わりに私が死にますから、とにかく父上が長生きできますように」と書いたものを奉納しました。そしたらそれが見事叶い、隆元は四十代の若さでポックリ。代わりに元就は長生きしたそうです。
それほどまでに父を想う、孝行息子の優しさに涙が溢れるいいお話です。