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戦国×ミュージック
第1章 心を合わせて~信長交響曲~
『ハーモニーは平等に』
織田信長には数多くの小姓――身の回りの世話をする若い武士が存在するが、その中でも特に寵愛を受けたと言われているのが、森可成(よしなり)の三男である、森蘭丸である。
「よいか、皆! 織田交響楽団に一番大事なものは、結束力だ! 美しき音色のため、余もまた、指揮者として皆を平等に評価している。決して、贔屓などしないと誓おう!」
「はい、信長様! このお蘭、信長様のお心に、感動いたしました!」
「おお、お蘭よ。愛い奴じゃ」
「信長様。私、光秀も感動いたしました!」
「黙れキンカン! 媚びて優遇してもらおうとは、汚い奴め!」
「えっ……いや、お蘭だって」
「言い訳無用! これ以上喋ると、蹴っ飛ばすぞ」
「は、はあ……」
「さて……忠臣の鏡であるお蘭には、なにか褒美をやらねばならぬな。さあ、欲しいものをなんでも言え」
「はい、信長様。ならば、ヴァイオリンのソロパートを演奏したいです」
「待ちなさい蘭丸、それは今私が担当しているパートではありませんか!」
「それは……ですが、あれは父可成が、生前に受け持っていたパート。私はただ、父の意志を継ぎたかったのです……」
「ですが今は私のパートです、我慢しなさい!」
「黙れ光秀! お蘭の健気な想いに、心を打たれないのかっ! お蘭、キンカンの言う事は気にするな。望み通り、ソロパートをやろう」
「やったぁー!」
「めっちゃ贔屓してるじゃないですか、信長様ー!」
信長は蘭丸に限らず、森家の人間は贔屓し通し激甘である。が、それは可成が浅井・朝倉軍の進軍を防ぎ、命を落とした経緯があるからだと思われる。
とはいえ、重臣である光秀が治める近江坂本五万石を欲しがる蘭丸も、なかなかどうして。そりゃ光秀も裏切るよね、と。