この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
終わらない夢
第1章 曖昧な夢
 嫉妬するほど愛してもいない。

 夫の不貞に怒るほど、自分も正しい人間なわけでもない。

 ただ、真実が知りたい。

 どうして、貴史が死ななくてはならなかったのか。その理由を。意味を私は知りたい。


「…知夏と会ったのは、半年前。会社の飲み会の帰り、酔っ払いに絡まれていたのを助けたんだ。」

 英輝はソファに座り、項垂れる。

「あの日、日曜日は彼女の二十歳の誕生日だったんだ。会いたいと、携帯があったけど貴史と出かけていると話したら、泣き出してしまったんだ。それをなだめている間に貴史が…。」

 陸橋を上まで登って、英輝を呼んだのだろう。

 携帯で話していて聞こえない。

 もっと、目立つように。
 気がつくように…。

 柵を乗り越え、手を振る。

「…俺のせいなんだ。」

 どうして、こうなってしまったんだろう。

 夫が彼女と出会わなければ。

 私が宏哉と出会わなければ。

 私と英輝が結婚しなければ。

 もう、何もわからない。どうしたいのかも、わからない。

 悲しいのに、苦しいのに涙も出ない。

「…少し、考えたいの。」

「そうか。そうだね…。」

 英輝は、あの女性と男女の関係があるのか。

 女としてではなく、妻として聞きたい。

「…あなた。その女性とは、どんな関係なの?」

 少しだけ、沈黙をする。

「…一度だけ、男女の関係をもってしまった。」

 英輝は優しいから。

 頼られたら、突き放すことなんて出来ない人だから。

「今は、何も考えられないの…。とりあえず、一人にして。」



 夜の街をただ一人、歩く。

 何処に行くわけでもなく、あてもなく。

 散々歩き、結局のところ今はここしか行くところがない。

 アパートの一室。
 インターフォンを押す。

 ドアが開き、中から宏哉が顔を出す。

「麻友子さん、どうしたんですか?」 

「…ごめんなさい。こんな時間に…。」

 手が延び、静かに力強く抱きしめられる。

 二人に言葉はいらなかった。

 ただ、熱い抱擁に身体を委ねる。


 やっと、みつけた私の半身。一対の翼。


 静かに、優しいキスをする。

 果てなく求め合う。

 もう、一人ではないと。ずっと、ずっと側にいると。



 これが夢なら、終わらないで欲しい。

 曖昧な夢なら覚めないで。
/17ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ