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終わらない夢
第1章 曖昧な夢
嫉妬するほど愛してもいない。
夫の不貞に怒るほど、自分も正しい人間なわけでもない。
ただ、真実が知りたい。
どうして、貴史が死ななくてはならなかったのか。その理由を。意味を私は知りたい。
「…知夏と会ったのは、半年前。会社の飲み会の帰り、酔っ払いに絡まれていたのを助けたんだ。」
英輝はソファに座り、項垂れる。
「あの日、日曜日は彼女の二十歳の誕生日だったんだ。会いたいと、携帯があったけど貴史と出かけていると話したら、泣き出してしまったんだ。それをなだめている間に貴史が…。」
陸橋を上まで登って、英輝を呼んだのだろう。
携帯で話していて聞こえない。
もっと、目立つように。
気がつくように…。
柵を乗り越え、手を振る。
「…俺のせいなんだ。」
どうして、こうなってしまったんだろう。
夫が彼女と出会わなければ。
私が宏哉と出会わなければ。
私と英輝が結婚しなければ。
もう、何もわからない。どうしたいのかも、わからない。
悲しいのに、苦しいのに涙も出ない。
「…少し、考えたいの。」
「そうか。そうだね…。」
英輝は、あの女性と男女の関係があるのか。
女としてではなく、妻として聞きたい。
「…あなた。その女性とは、どんな関係なの?」
少しだけ、沈黙をする。
「…一度だけ、男女の関係をもってしまった。」
英輝は優しいから。
頼られたら、突き放すことなんて出来ない人だから。
「今は、何も考えられないの…。とりあえず、一人にして。」
夜の街をただ一人、歩く。
何処に行くわけでもなく、あてもなく。
散々歩き、結局のところ今はここしか行くところがない。
アパートの一室。
インターフォンを押す。
ドアが開き、中から宏哉が顔を出す。
「麻友子さん、どうしたんですか?」
「…ごめんなさい。こんな時間に…。」
手が延び、静かに力強く抱きしめられる。
二人に言葉はいらなかった。
ただ、熱い抱擁に身体を委ねる。
やっと、みつけた私の半身。一対の翼。
静かに、優しいキスをする。
果てなく求め合う。
もう、一人ではないと。ずっと、ずっと側にいると。
これが夢なら、終わらないで欲しい。
曖昧な夢なら覚めないで。
夫の不貞に怒るほど、自分も正しい人間なわけでもない。
ただ、真実が知りたい。
どうして、貴史が死ななくてはならなかったのか。その理由を。意味を私は知りたい。
「…知夏と会ったのは、半年前。会社の飲み会の帰り、酔っ払いに絡まれていたのを助けたんだ。」
英輝はソファに座り、項垂れる。
「あの日、日曜日は彼女の二十歳の誕生日だったんだ。会いたいと、携帯があったけど貴史と出かけていると話したら、泣き出してしまったんだ。それをなだめている間に貴史が…。」
陸橋を上まで登って、英輝を呼んだのだろう。
携帯で話していて聞こえない。
もっと、目立つように。
気がつくように…。
柵を乗り越え、手を振る。
「…俺のせいなんだ。」
どうして、こうなってしまったんだろう。
夫が彼女と出会わなければ。
私が宏哉と出会わなければ。
私と英輝が結婚しなければ。
もう、何もわからない。どうしたいのかも、わからない。
悲しいのに、苦しいのに涙も出ない。
「…少し、考えたいの。」
「そうか。そうだね…。」
英輝は、あの女性と男女の関係があるのか。
女としてではなく、妻として聞きたい。
「…あなた。その女性とは、どんな関係なの?」
少しだけ、沈黙をする。
「…一度だけ、男女の関係をもってしまった。」
英輝は優しいから。
頼られたら、突き放すことなんて出来ない人だから。
「今は、何も考えられないの…。とりあえず、一人にして。」
夜の街をただ一人、歩く。
何処に行くわけでもなく、あてもなく。
散々歩き、結局のところ今はここしか行くところがない。
アパートの一室。
インターフォンを押す。
ドアが開き、中から宏哉が顔を出す。
「麻友子さん、どうしたんですか?」
「…ごめんなさい。こんな時間に…。」
手が延び、静かに力強く抱きしめられる。
二人に言葉はいらなかった。
ただ、熱い抱擁に身体を委ねる。
やっと、みつけた私の半身。一対の翼。
静かに、優しいキスをする。
果てなく求め合う。
もう、一人ではないと。ずっと、ずっと側にいると。
これが夢なら、終わらないで欲しい。
曖昧な夢なら覚めないで。