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終わらない夢
第2章 現の夢(うつつのゆめ)
女性をよく見ると、抵抗した時に胸元が引き裂かれ 、握りしめている手の甲に擦り傷が何ヵ所かあった。
「とりあえず、傷の手当てを。あ、あそこのコンビニで絆創膏位、売ってると思うから。」
路地を出て、明るいコンビニの中に入る。
今時のコンビニには、消毒液もガーゼも売っていた。
何点か役に立つものを買い、近くの公園で手当てをする。
ベンチに座る女性の顔は青白く、眉間に皺を寄せている。
「…怪我の手当てをしたら、タクシーで帰った方がいいね。」
引き裂かれた服をかき寄せ、羽織っていた薄手のカーデガンのボタンを上まで締める。まだ、震えている手にそっと触れる。
白く、冷たい。
手をとり、消毒液をかけ優しく拭き取る。
かなり、深いようで痛みで顔をしかめる。
ガーゼを当て、テープで止める。使いかけのガーゼ等をコンビニの袋に入れる。
「立てるかな?明日にでも、病院に行った方がいいね。」
時計を見て、自分も終電に乗り遅れているのに気がつく。
とりあえず、駅前のタクシー乗り場に行こうと促す。
「…帰りたくない。」
女性は下を向いたまま、動かない。
このまま、ここに置いて帰るのも後味が悪い。
「…あの、お願いが。」
女性はふっ、と顔を上げる。
「…あの…。私…一宮知夏(いちみやちなつ)と言います。助けてくれてありがとうございます。」
小さな声が震えている。
「家は何処ですか?タクシー乗るついでに送ります。」
怖がらせないように、つとめて明るく話しかける。
頭を横に振り、自分にすがり付く。
「帰りたくないんです。帰る場所なんて、私にはないんです。あんな、あんな所…私の家なんかじゃない…。」
必死にしがみつく手に、何かを感じる。
「お願いです。お金…お金、払うので。あの…一緒にホテル泊まってください。」
必死な顔で、すがり付かれ無理に離すことが出来なくなってしまった。
長い髪から覗くうなじに。細い肩に、麻友子には決して起こらない欲情を感じる。
麻友子とたった一度だけ、セックスをした。
結婚をして、初夜の行為だけで貴史を授かった。
それで、麻友子は十分満たされてた。
自分はそれから九年もの間、絶え間なく不倫相手が必ず側にいた。長く付き合うのも、一夜限りの女も。
「とりあえず、傷の手当てを。あ、あそこのコンビニで絆創膏位、売ってると思うから。」
路地を出て、明るいコンビニの中に入る。
今時のコンビニには、消毒液もガーゼも売っていた。
何点か役に立つものを買い、近くの公園で手当てをする。
ベンチに座る女性の顔は青白く、眉間に皺を寄せている。
「…怪我の手当てをしたら、タクシーで帰った方がいいね。」
引き裂かれた服をかき寄せ、羽織っていた薄手のカーデガンのボタンを上まで締める。まだ、震えている手にそっと触れる。
白く、冷たい。
手をとり、消毒液をかけ優しく拭き取る。
かなり、深いようで痛みで顔をしかめる。
ガーゼを当て、テープで止める。使いかけのガーゼ等をコンビニの袋に入れる。
「立てるかな?明日にでも、病院に行った方がいいね。」
時計を見て、自分も終電に乗り遅れているのに気がつく。
とりあえず、駅前のタクシー乗り場に行こうと促す。
「…帰りたくない。」
女性は下を向いたまま、動かない。
このまま、ここに置いて帰るのも後味が悪い。
「…あの、お願いが。」
女性はふっ、と顔を上げる。
「…あの…。私…一宮知夏(いちみやちなつ)と言います。助けてくれてありがとうございます。」
小さな声が震えている。
「家は何処ですか?タクシー乗るついでに送ります。」
怖がらせないように、つとめて明るく話しかける。
頭を横に振り、自分にすがり付く。
「帰りたくないんです。帰る場所なんて、私にはないんです。あんな、あんな所…私の家なんかじゃない…。」
必死にしがみつく手に、何かを感じる。
「お願いです。お金…お金、払うので。あの…一緒にホテル泊まってください。」
必死な顔で、すがり付かれ無理に離すことが出来なくなってしまった。
長い髪から覗くうなじに。細い肩に、麻友子には決して起こらない欲情を感じる。
麻友子とたった一度だけ、セックスをした。
結婚をして、初夜の行為だけで貴史を授かった。
それで、麻友子は十分満たされてた。
自分はそれから九年もの間、絶え間なく不倫相手が必ず側にいた。長く付き合うのも、一夜限りの女も。