この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
終わらない夢
第2章 現の夢(うつつのゆめ)
 女性をよく見ると、抵抗した時に胸元が引き裂かれ 、握りしめている手の甲に擦り傷が何ヵ所かあった。

「とりあえず、傷の手当てを。あ、あそこのコンビニで絆創膏位、売ってると思うから。」

 路地を出て、明るいコンビニの中に入る。

 今時のコンビニには、消毒液もガーゼも売っていた。

 何点か役に立つものを買い、近くの公園で手当てをする。

 ベンチに座る女性の顔は青白く、眉間に皺を寄せている。

「…怪我の手当てをしたら、タクシーで帰った方がいいね。」

 引き裂かれた服をかき寄せ、羽織っていた薄手のカーデガンのボタンを上まで締める。まだ、震えている手にそっと触れる。

 白く、冷たい。

 手をとり、消毒液をかけ優しく拭き取る。

 かなり、深いようで痛みで顔をしかめる。

 ガーゼを当て、テープで止める。使いかけのガーゼ等をコンビニの袋に入れる。

「立てるかな?明日にでも、病院に行った方がいいね。」

 時計を見て、自分も終電に乗り遅れているのに気がつく。

 とりあえず、駅前のタクシー乗り場に行こうと促す。

「…帰りたくない。」

 女性は下を向いたまま、動かない。

 このまま、ここに置いて帰るのも後味が悪い。

「…あの、お願いが。」

 女性はふっ、と顔を上げる。

「…あの…。私…一宮知夏(いちみやちなつ)と言います。助けてくれてありがとうございます。」

 小さな声が震えている。

「家は何処ですか?タクシー乗るついでに送ります。」

 怖がらせないように、つとめて明るく話しかける。

 頭を横に振り、自分にすがり付く。

「帰りたくないんです。帰る場所なんて、私にはないんです。あんな、あんな所…私の家なんかじゃない…。」

 必死にしがみつく手に、何かを感じる。

「お願いです。お金…お金、払うので。あの…一緒にホテル泊まってください。」

 必死な顔で、すがり付かれ無理に離すことが出来なくなってしまった。

 長い髪から覗くうなじに。細い肩に、麻友子には決して起こらない欲情を感じる。

 麻友子とたった一度だけ、セックスをした。

 結婚をして、初夜の行為だけで貴史を授かった。

 それで、麻友子は十分満たされてた。

 自分はそれから九年もの間、絶え間なく不倫相手が必ず側にいた。長く付き合うのも、一夜限りの女も。
/17ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ