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花籠屋敷
第3章 来客の号外
「はい、大丈夫です」
オニギリを食べ終え、椿にしっかり返事を返した。
「そう、じゃあ呼んでくるわ待ってて頂戴」
そうして、連れてこられたのは、先程側頭部に黄球をぶつけた縞園藤丸本人だった。
桔梗は藤丸が現れた事にも驚いたが、一番驚いたのはその内容だった。
「昼は悪かった…で、こんな怪我をさせておいて、こんな事を言うのも悪いんだが…」
桔梗は何か不穏なものを感じる…
「君の札がまだ空いてるなら、君の札を俺にくれないか?」
桔梗は目を丸くする…お客に求められなければ身売りは無しだが、お客から求められたら、身売りをするのが屋敷の掟だ……
拒否権は無い。
ましてや、一人の時ならまだしも椿の目の前である。
渡さない訳にはいかない。自分の札が空きっぱなしなのは椿も知っていた。
桔梗は自分の札を震える手で、藤丸に渡す。
「ありがとう。身体良くなってからで良いからさ……そういえば君の名前は?」
「桔梗です。」
「綺麗な名前だ…じゃあ、またな」
藤丸はそういうと手首に紫の自分の札を巻いて出て行った…
桔梗は、今起きた事が信じられず、自分の札入れを眺めるも一枚しか無い…
「初めて札付きね桔梗」
困惑する桔梗の頭を椿は撫でた。
「付け始めは緊張するけど、半日もすれば慣れるわ。時が来たら、一生懸命もがくうちに、あっという間にお役ご免よ」
桔梗は撫でられながら、椿を見上げる。
「椿さん…私今日ここでこのまま寝ても良いですか?」
「あら、急にお休みモード?…最初からその予定だわ。頭、大事にね」
椿も部屋を出て行き。一人になった桔梗は、手首に札を巻いて眺める。
遂に買われた……自分が……
遠くで客と女中の楽しげな話し声が聞こえてくる。
桔梗は不安で、胸がいっぱいになってくると、布団に潜り込んで瞳を閉じた。