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第4章 分水嶺

「ごめんなさい…」

「別に、謝らなくても良いさ。色々言われて勉強し続けるもんだろ。俺もそうだし…ご馳走様！じゃあ、桔梗行こうか？」

桔梗は自分の仕事振りに我が身を守ってばかりの後ろめたさを感じ俯向いた。
藤丸はそんな桔梗をなだめれば、その手を引っ張る。

「あっ！…食台だけ、片付けます！…あの…大広間で待ってて貰って良いですか？…」

「ああ、ごめんな！…わかった。大広間で待ってるな。桔梗ちゃん」

藤丸はそのまま宴会場を出て行く。桔梗は動揺を鎮めると食台を片付け藤丸の下へ向かった。

大広間では、藤丸が笠松と談笑している所だった。椿も笠松の隣に立ち、話に混じっている。

「椿さん、今晩お願いします。友人として凄く良い奴なのは保証しますし、女性に乱暴を働くような奴では無いですから！…あっ、でも…女慣れして無いんで、楽しいかどうかは…」

「藤丸！そんな紹介良いだろ！それに、俺は椿さんとまだ、そう…決めて無いしだな！……」

椿に自分を紹介され顔を赤くしながら、笠松は藤丸の紹介を止めさせていた。椿はそんな笠松の手を自然に掴む

「そうね…でも今晩笠松様みたいに男らしい人と一緒にいれるのは嬉しいですわ…ゆっくり話しましょ…二人で楽しく…それからまた考えなさって…」

笠松の口が止まった。椿に手を繋がれ見つめられた途端に蛇に睨まれた蛙のように椿の目を見つめ返すだけになる

「絵になるぜお二人さん！…あっ、桔梗ちゃんも来たな！じゃあ、後は明日の朝という事で！」

「いきましょう」と手を引く椿に緊張でぎごちなく歩く笠松。二人はそのまま一階の西の角を曲がって消えていった。

「じゃあ、俺たちも行こうか？」

桔梗は札合わせの男女の中、藤丸に手を引かれ部屋へと向かう。
慣れたように談笑する者
張り詰めたように無言で歩く者
期待に獣じみた気配を漂わす男…怯える女…其処となく色香が漏れる廊下を歩いて桔梗は緊張感が高まる

不安や緊張で破裂しそうな程心臓が早鐘を打つ中、灰色の扉が藤丸の手に開かれた。