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花籠屋敷
第7章 異説・石楠花の客取り
「お母さん…父ちゃんは?」
石楠花は燃える家々の中で母を見つける。見慣れた木造建築の群れには赤い炎が飛び火して、愛着ある情景を侵食していた。母親はそんな壊れた故郷の一角で顔を煤と泥で汚し、乱れた髪のまま茫然自失の様相で座り込んでいた。
「ごめん…ごめんな…父ちゃんは…」
母親はそれきり口を開かなかった…石楠花はその母の言葉に悟った。父は死んだんだ…時代遅れになった武家の誇りの示すまま戦って死んだんだと…
「父ちゃん…立派な侍だったんだ…」
石楠花は座り込んだままの母の側で棒立ちになる。悲しい事…悔しい事…寂しい事…許せない事…感じる事が多過ぎて感じる事を止める…ただ瞳に破壊された故郷を写すのみだ…隣で泣き始めた母が石楠花の手を握る
「勝恵ごめんな…母ちゃん…父ちゃん…止めれなんだ…」
母の何が悪いんだろう?私は母の何を許せば良いんだろう?石楠花は謝る母の手を握り返す。堪らなくなって母を抱き締めた。
「お母さん…お母さんは何も悪くないよ!悪いのは…こんな事をする彼奴らだよ!」言葉にすると感情が一気に流れだした。燃える故郷の中で石楠花は母と共に泣いた………
「お母さん!」
石楠花は大声を上げて飛び起きた。トラウマのフラッシュバック…額には脂っぽい嫌な汗が浮いている。そのままボンヤリと寝台の上に座り込んだ…
「お母さん……って、自分で生きるって決めたのに、またお母さんかよ…あたい…」不意に母にすがりたくなる自分に嫌気が差す。石楠花は自分の左手の札を忌々しく見つめた。桃色の木札…白線が大輪の石楠花の花を描き左上角を金細工が彩っている。細工の中では三連で真珠のような白玉がカーブを描いてはめ込まれていた。
石楠花は燃える家々の中で母を見つける。見慣れた木造建築の群れには赤い炎が飛び火して、愛着ある情景を侵食していた。母親はそんな壊れた故郷の一角で顔を煤と泥で汚し、乱れた髪のまま茫然自失の様相で座り込んでいた。
「ごめん…ごめんな…父ちゃんは…」
母親はそれきり口を開かなかった…石楠花はその母の言葉に悟った。父は死んだんだ…時代遅れになった武家の誇りの示すまま戦って死んだんだと…
「父ちゃん…立派な侍だったんだ…」
石楠花は座り込んだままの母の側で棒立ちになる。悲しい事…悔しい事…寂しい事…許せない事…感じる事が多過ぎて感じる事を止める…ただ瞳に破壊された故郷を写すのみだ…隣で泣き始めた母が石楠花の手を握る
「勝恵ごめんな…母ちゃん…父ちゃん…止めれなんだ…」
母の何が悪いんだろう?私は母の何を許せば良いんだろう?石楠花は謝る母の手を握り返す。堪らなくなって母を抱き締めた。
「お母さん…お母さんは何も悪くないよ!悪いのは…こんな事をする彼奴らだよ!」言葉にすると感情が一気に流れだした。燃える故郷の中で石楠花は母と共に泣いた………
「お母さん!」
石楠花は大声を上げて飛び起きた。トラウマのフラッシュバック…額には脂っぽい嫌な汗が浮いている。そのままボンヤリと寝台の上に座り込んだ…
「お母さん……って、自分で生きるって決めたのに、またお母さんかよ…あたい…」不意に母にすがりたくなる自分に嫌気が差す。石楠花は自分の左手の札を忌々しく見つめた。桃色の木札…白線が大輪の石楠花の花を描き左上角を金細工が彩っている。細工の中では三連で真珠のような白玉がカーブを描いてはめ込まれていた。