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花籠屋敷
第7章 異説・石楠花の客取り
石楠花は昨日2人組の男に身買いされたのだった。時計を見るとそろそろ約束の時間が近づいている。重い腰を上げると石楠花は大広間に向かう。身買いの男達はもう待っていた。

「おう…来た来た」同じ札を左手に掲げる角刈りの男。ガタイが良く見た目にも荒事に強そうなタイプだ。30代位で男盛り…そんな屈強な男の腕が石楠花の肩を抱く。

石楠花は札を分けた時からこの男が嫌だった。気の良さそうな口調だが高圧的なプレッシャーと、わざわざ若い男を連れて歩く様も気になる。恐らくは後輩なのであろうが…わざわざこんな遊びにまで後輩を巻き込む男の思考が石楠花は全く理解出来なかった。

後ろから付いてくる後輩の男は若く、まだ20代前半、先輩の男に一つ返事で従順に付いて来ていた。石楠花はなんと無くこの後輩に憐憫を抱く。体育会系のような先輩の下で否定は恐らく不可能に近いのだろう。キチッと刈り上げの入ったオールバック…しかし表情は少し困ったような複雑な表情で後ろを歩いていた。

「和憲ー!」と先輩の男が後ろの後輩を呼ぶ
「はい、徳山さん」和憲(かずのり)と呼ばれた後輩はハッキリとした口調で先輩の会話の相手をする。
「お前。女は…初めてか?」徳山の肩を抱く腕に力が入る。石楠花は、そのまま徳山に抱き寄せられた。「あっ…はい。自分はまだ…」デリカシーの無い質問に少し気恥ずかしげに和憲が答えた。
質問の答えに気を良くしたのか徳山は笑い「期待しとけ和憲!お前にも良い思いをさせてやる。今日は楽しめ!」快活の表情で声を張り上げる。

石楠花はこれからの一夜が自分にとって都合良く終わる事は無いと心象を青く沈ませる…更に増して石楠花は処女だった…この屋敷に入ると決めて覚悟はしていたが…徳山のような男に奪われると言うのは苦痛だった…

せめて、後輩の男に貰われますように…
石楠花はそんな切なくやるせない思いを胸にしたためながら、今晩過ごす黒白格子柄の扉の前へ男達と向かった。
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