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花籠屋敷
第1章 屋敷入りの記憶
桔梗は促されるまま椅子に座る。髪切りが始まった。
顔を覆うように顎先まで伸びた髪が手早くカットされていった。
前髪は顔の右側を流れるようにカット。サラサラの直毛を前下がりのミディアムボブへと作られた。

「じゃあ、脱いで…採寸を終わらせよう」

時宗は切り終わったのを見れば桔梗のローブを脱がせる。仕立屋は必要な採寸を取ると時宗に報告だけし、部屋を後にした。

「さて、お疲れ様。今日の所は全て終了だ。君の部屋は二階の東の奥の部屋だ。これから自由に使うと良い。明日からは化粧や、仕事の手習いを野菊と学びなさい」

「あのっ…僕はこれから…どういう仕事を……」

淡々と仕事を伝える時宗だが、桔梗は肝心な事を質問した。
自分が何をこれからさせられるのか…
時宗は平然と口を開いた

「私の屋敷は権力者や有力者のための高級サロンだ。休養地として、養生地として使って頂いてる…また、屋敷は娼館としてもお客を受け入れている。君の仕事はお客様に奉仕する事だ。メイドとして娼婦として」

内容に桔梗は驚いた。執事としてならわかる、小間使いとしてなら…メイドはもとより娼婦としてなど働ける訳がない

「僕は、男です。僕を抱きたいモノ好きなどそう居ないんじゃないでしょうか?…」

「そんな心配は無用だ。最近お客もただの娼婦に飽きてきた手合いも居てね。丁度良い相手になれると思うよ。彼等は求めてる綺麗な顔でもっと刺激をくれる相手をね…まあ、色々と混乱もするだろうが、住めば都。仕事だと思えば慣れる。今日は此処まで、休みなさい」

困惑の表情を、浮かべる桔梗を他所に時宗は伝える事だけ伝えると部屋を出て行ってしまった。
一人部屋を後にする桔梗は言われた自室に入り寝台に横になった。
西洋風の部屋、アンティークの小型家具が置かれている。
桔梗は臙脂色の布団に潜り、考えるのをやめ1日を終えた。
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