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花籠屋敷
第1章 屋敷入りの記憶
浴室から少し脱衣室へ顔を出すと野菊がバスタオルとローブを準備して待っていてくれた。
桔梗は、バスタオルを受け取れば浴室で身体の水気を切ってローブに着替える。

「じゃあ、屋敷の中入ろ!これなら大丈夫…んん〜…でもどうしようか…とりあえず調理場の椿姉さんに助けてもらおう」

野菊に連れられ桔梗は屋敷の中へと入っていく。
中は赤い絨毯の引かれた白い廊下が続いた。
湯屋とかかれた暖簾をくぐると部屋の扉が何個も並んでいる。綺麗な屋敷だが部屋の数が異様に多い。
連れられるまま真っ直ぐ歩く、途中日本庭園の見える廊下を通過し更に真っ直ぐ歩けば大広間だ。
真鍮で出来た寝台に座る大きな女神像が鎮座し、二階へ続く階段と地下への階段が伸びていた。

野菊は大広間を右に曲がり真っ直ぐ廊下を進めば、調理場とプレートの貼られた扉を開いた。

中は数名の女中が夕飯の支度中だった。
「ああ、野菊。良く連れてきたわ。時宗様が湯屋にだけ指示を出して屋敷に入られるから心配してたの。桔梗の次の指示は私が受けてるわ。野菊は、このまま配膳を手伝って頂戴。桔梗は私とおいでなさい。髪切りと採寸が待っているから」
白い手拭いを頭に巻いて料理を盛り付けていた女性が此方に振り向いた、アーモンド形の目をした狐顔の美人だ女性らしい曲線だが、全体的にスラっとしている。

野菊は返事を返せば配膳の仕事へ向かう。椿は桔梗を連れて調理場を出ると、手拭いを外した。綺麗な黒髪を長く伸ばし前髪は眉毛程で切り揃えている。

「さあ、ここよ。時宗様が待ってるわ。中へ入って」

中はサッパリと何も無い部屋だった。中央に椅子が置かれ、西洋の髪切り鋏を携えた髪切り屋と、ほんの前自分を買い上げた時宗が待っていた

椿は桔梗を中へ入れると一礼し部屋を出て行く。
時宗は椅子の背もたれに手を掛けると片手で指して桔梗に座るように促した。
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