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桃色フラストレーション
第4章 二人の夜
「あれ……、もうこんな時間だ」
澤田さんが時計を見ると、もう23時を過ぎていた。
「あ、ほんとだ!そろそろ帰りましょうか」
名残惜しいのはもちろんだけど、これ以上厚かましい真似はしたくない。
「うん、でも……、明日お休みですよね?」
「は、はい」
「オレんちここから歩いて5分ぐらいなんで……、部屋で飲み直しませんか」
「へっ!?!?」
心臓が飛び出るかと思うとんでもない驚き方をしてしまった。
「あっ……、いや、初対面みたいなもんで、さすがに嫌、ですよね……」
また、苦笑いというより、照れ笑い。
「いいい嫌じゃないですよ嫌じゃないですけど、びっくりして」
そしてまたくすっと笑う、笑顔。どうしたらいいのやらこれ。
「話し足りないな、って思ったんです。桃井さんと。その、下心とかじゃなくて」

ボッ……と全身に火が点いた。しししし下心大歓迎なんですよ、っていうかこっちが下心ありまくりで!!!とは、言えるわけがない……。

「あっ……、はいっ……。その……、よ……酔ってるのでっ、お部屋にお邪魔して失礼があってはいけないと思いますのでっ、帰ろうかなと……っ!」
「オレも酔ってます。……酔ってるから、もう少し一緒にいたいな……って思ったんだけど、だめ、かな?」
やや甘えるようなその物言いと表情に、私は撃ち抜かれた。あれだけ(不埒な)妄想をし続けていた相手が、酔って私と部屋で一緒にいたいと言っている……!?信じがたい目の前の現実だけれど、ここは逃げてはいけない、飛び込まねばならない特急電車に乗るべき分岐点なのじゃないだろうか……!と思った。
「全然、だめじゃ……ないです」
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