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桃色フラストレーション
第4章 二人の夜
彼が住むマンションの一室は、さほど広くはないけれど、小奇麗に片付けられていてシンプルな内装。そして女の影は……見当たらなかった。二人掛けのソファに並んで座り、コンビニで一緒に買ったビールやチューハイを飲みながら、ほろ酔いに任せて尋ねてみる。
「あの……、澤田さん、彼女、とかは……」
「え?いたら女性を部屋に呼ぶと思います?」
「あ、はは、そうですよね……」
「そう言う桃井さんは?」
「え……、いたらこんな……、澤田さんのこと気にしてると思います……?」
「ふふ、そうですよね。……っ、ああ、まずいな……、そんなこと言ってたら下心発動しちゃいそうですよ」
え、全然、問題ないですむしろ発動してください。とも言えず。

「けど、本当に……あの、私がずっと見てたとかって、気持ち悪くないんでしょうか……」
「またそういうことを。気持ち悪かったら飲みに誘ったり家に呼んだりしないでしょう?」
「そうですけど……」

「……桃井さんだから大丈夫なんですよ。ぶっちゃけ……、好みだったんで」
「へっ……!?」

照れくさそうにそうつぶやいた澤田さんに、クラクラした。
「ああオレ……、ちょっと飲み過ぎたかな。こんなことシラフじゃ言えねー」
「だ、大丈夫です……私も結構、酔ってるし……」
「うん……、でも、酒の勢いで一夜を共に……とかって、まずくないですか?」
ああ……なんという心地よい響き!酒の勢いで一夜を共に、酒の勢いで一夜を共に……!今まさに私達はそういう状況に陥っているんだ。という喜ばしい感情が、きっと私の瞳にうるうると映し出されていたと思う。
「ま、まずいかもしれない……けど、それもいいかも、とか……」
自分でも何を言っているのかわからなくなったその時。
「桃井さん……」
「っ!!」
澤田さんが私を抱き寄せた。あっ……、あぁぁぁ!!もうこのまま抱いて、抱いて欲しい……!
「桃井さん……、可愛い」
う、うわぁぁ……!と思いながら顔を上げると、唇が重ねられた。
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