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桃色フラストレーション
第1章 呼び覚まされて
「昨日はありがとね!ランチ、あのカフェでいい?」
「うん、行こ」
最近お気に入りの、会社の近くにできたカフェ『パラダイス』。ここでのフレンチ風味のカフェプレートは、安くてお洒落で満足感がある。テラス席もあるこのカフェで、私達はよくランチタイムを過ごしている。

(あ……、いた!)
このカフェで、この時間に、よく見かける、あの人が、今日もいた。
(ラッキー……)
心の中でそう思っている私がいる。そう、彼は、数年ぶりに私の中の「気になる存在」。

彼については、近くの会社で働いているんであろうことしか、知らない。勤め先も、名前も、どこに住んでいるのかも、既婚か未婚かも、もちろん彼女がいるかいないかも……、何も知らない。指輪はしていないけど。

なのに、何故なんだろう。
ひと目見た時からずっと、あの人が気になる。

ひと目ぼれ?……と言う程に恋心を抱いているわけじゃない。けれど、きっと第一印象のどこかが自分のタイプなんだと思う。たぶん、背格好……、骨格?とか、手の感じとか仕草とか。そんなに人目を引く程のイケメンでもない。むしろ、このカフェの店員さんの方がずっとイケメンなぐらい。

なのに、何故なんだろう。
ひと目見た時からずっと……、あの人を見ると、欲情してしまう……。

大学時代の先輩に遊ばれてから、また遊ばれて悲惨な想いをするんじゃないかと、恋をするのが怖くなっている。それでいろんなものを封印して、今まで5年間、好きになった人はいなかったし、キスもセックスも誰ともしていないセカンドバージン状態。

それでもそんなに欲求不満は感じていなかった。就活、大学卒業、上京に就職……と、目まぐるしい日々を真面目に過ごしてきたから、禁欲生活という意識もないままここまで来た。

――そんな私のモノクロな日々に、彼が色を着け始めた。

好き?恋なの?声をかけてみた方がいいの?気になる根本を自分で探って、出た結果は「欲情」だった。彼を見ると、エロスが呼び覚まされていく。封印していた熟れた身体が、求め始める。何故、名前も知らないあの人に……?それが自分でもまったくわからない。とにかく彼の存在が、私の身体を女に戻そうとしていっている……。
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