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桃色フラストレーション
第14章 すれ違いと偶然
「……でも、俺も千代さんとのセックス……最高に気持ち良かったし、最高に楽しかったからさ……、べつに、いいんだ。もう」
「純くん……」
「いろいろ勉強にもなったしさ……?次の彼女はきっとイカせまくれるよね」
皮肉なことに、笑顔でそう言う彼が、こんなに良い人であることをこの時初めて実感した。今まで私は、純くんの身体しか見ていなかった……。
「実は職場の子にずっと付き合ってって言われててね……、踏ん切りつかないで曖昧にしてたんだけど、付き合ってみようと思う」
そう言った彼の顔は少し光が射していて、私からは遠い人に見えた。
「千代さんが俺の殻、破ってくれたからね……次に進めるよ」
「うん……ごめんね純くん……こんな私と今まで……ありがとう」
「好きだったよ、千代さん。ほんとうに」

もう指一本も触れることのない二人。現実逃避も大概にしないと相手に迷惑をかけ傷付けてしまうんだ……ということを私は学び、純くんと新しい彼女の幸せを願いつつ、彼の家を後にした。もうこんなことを繰り返しちゃいけない……。

――とは言え……、どうしたらいいものやら……。光に直接アヤノさんとのことを確認するというのは勇気が出ないし、電話帳登録も削除してしまって連絡先もわからない。

光が香港に行ってからもうすぐ三ヶ月。せっかく封印していたのに純くんとの関係を持ち続けていたことで身体が言うことを聞かなくなっている。そんな自分の性欲に嫌気がさし始めていながらも、光と出会う前のように自分で慰めて暮らした。性欲だけは萎えないのに、何をするにも気力がわかず、仕事でもミスが続き、それでもどうにかこれ以上堕落していかないように……と日々を乗り切っていた。

そんな時、実家の母が倒れたという連絡が入った。
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