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桃色フラストレーション
第15章 回顧
「とは言え当面、命に別状はなくて……うち、姉がいるんだけど関西に嫁いじゃってるからほとんど来れなくて、働いてる母親と俺がずっと病院通いで」
「苦労してるよな、透は。よくやってるよ」
「仕事と病院通いの繰り返しで、正直息詰まってるとこあってさ……これからもしばらく病院で桃井と会えるのかなーなんて思ってちょっと浮かれてた、勝手に。いや、申し訳ないよな、おふくろさんは回復した方がいいことなんだけどさ」
「あっ透!やっぱ喜んでたんだ?桃井に会えたこと」
「ばっ……、もー、そうやってからかうなよトミオ!そりゃだって……知り合いに会えるならそれだけで病院通いも華やかになるってだけのことでっ、」
「あーはいはい。言い訳ご苦労さん。おまえほんっと顔に出るよな?」
「う、うるせー!」
長年の友達同士特有の空間。今の高崎くんにとってはきっとトミオくんのこのお店も、相当な癒しになっているんだろう。

「……私も、嬉しかった。こうして高崎くんと、トミオくんにも会えて。……あっ、ほら、同窓会とかはちょっと遠くて日帰りきついなって思って……、あんまりこっちにも帰ってきてなかったし……、ちょっと、私も……息が詰まってる時期だったから」
「ん。よかった」
腕を組んで頷くトミオくんには既にお父さんの風格が漂っている。
「とりあえずさ、退院までの間、俺が車で送り迎えするよ。あの路線バス本数少ないだろ?荷物もあるんだし、俺もどうせ病院行かなきゃいけないついでだからさ、遠慮しないで」
「うん……ありがとう」
トミオくんはそう話す私達を、うんうん、と見守るように頷いていた。

それから毎日、高崎くんの車で病院に行った。彼はとても紳士で配慮深く、院内では既に顔が広くてあちこちのご老人や子ども達と挨拶を交わし世間話をしていることを知った。社交的とは言えない自分からは考えられないぐらいに大人に見えたし、地元に不義理な私にも、こんな友人がいることをありがたく感じた。
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