この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
×アリエナイカノジョ×
第6章 ホンネの一コマ
「あ………」
薄井くんの小さな声。
闇雲に歩いて、辿り着いた河川敷。
夕暮れ時の川岸に二人の人影があった。
「あれ…先生と………」
「………」
言わなくたって分かってる。
メガネを掛けてる薄井くんさえ、暗くなりかけている場所でも誰だか分かる距離。
紗英達に気付いていないのか、お父さんとその影に隠れている女性は体を寄せ合って佇んでいた。
「お父……さん」
心の中がざわめく。
二人から視線が外れない。
親子なのに、普通以上の感情を持っている事は自覚している。
二人を見ていると落ち着かない。
薄井くんも気を利かせてくれているのか、紗英の後ろで黙った儘だった。
「………あっ」
二人の顔が近付いていく。
もう、ざわめきを堪える事なんてムリだった。
「あっ、ちょっと、葉山さんっ」
薄井くんの言葉を背中に受けて走り出していた。