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金木犀
第3章 悪因悪果
振り替えって彼女を見ると、水無月は鞄の中から弁当箱を取り出していた。急いでいるためか、手がおぼつかない。
「は?」
思わず刃かにしたような言い方になってしまったが、水無月はたいして気にもせず、少し節目がちに、臆病な小動物を連想させるような動きで、ちょこちょこちこちらに近づいていた。
顔が真っ赤になっている。自分のお腹がなったわけではあるまいし、変わったやつだ。
「これ──よかったら、食べてください」
水無月が差し出した弁当箱の中には、色とりどりのサンドウィッチが並べられていた。ハムやツナ、卵やカツレツまで、店で売っているような、綺麗に四角に切られたサンドウィッチが敷き詰められている。
弁当箱から漂ってくるパンの匂いに食欲をそそられたが、食べてくださいといわれて、はいそうですかいただきますとなるくらいの図々しさは持ち合わせていなかった。
自然、停止してしまう。
「えっと……」
俺がなんの反応もしないからか、彼女の眉がだんだん下がって、背筋が丸くなっていく。伏し目がちだった目線は、床を通過して地上から百メートル先の地盤を見ているような目をしていた。
「──食べてくださいって……。それ、お前の昼飯じゃないのかよ」
「あの……っ。それは、あのあのああのあのっ、わわ私、いつも多目に作っているのでっ!」
「ふうん」
漫画でこのシーンを描いたのなら、彼女の顔は汗だらだらになって、目がぐるぐると回っていただろうな、と思うくらい、彼女は取り乱してしまったので、少しからかいたくなり、意地悪をしてみた。
「…………」
「きゃっ!」
まあ、いわゆるスカートめくりである。
「なななななな……なんでええ!? えええ!? 今、えええええ!?」