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影に抱かれて
第11章 回りだす歯車

なんて恐ろしい……とリュヌは改めて思った。

使用人のものは、それが命であっても自分の好きにできる……そう思っているのかもしれない。

それにそう思われても仕方がないようなことを自分がしてしまったのだ。

しかしリュヌにはひとつだけ譲れないことがあった。これだけは言っておかなければいけない……

「ドゥルーのことを侮辱しないでください……僕は、ドゥルーのおかげで何とか日々を送ることが出来たんです。本当に感謝しています」

夫人に対して口ごたえとも取れる言葉を口にするリュヌを見て、夫人は意地が悪そうに笑った。

「まあ……口ごたえまで教えるなんて大した学園ね。そんなことを言うなんて……その顔を使って、ドゥルーのことも誘惑したのかしら?」

止まらない蔑みの視線に、リュヌは生まれて初めて人のことを嫌いになってしまいそうだと思った。そんなことは、いけないことなのに……

「まあ、あんな子の話なんてもういいわ。貴方を呼び戻した理由は一つだけよ。もとのジュールに戻してほしいの。もとはと言えば貴方のせいでジュールは人が変わってしまったのだから……それが責任というものでしょう? 次期当主らしい生活を、早く」
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