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影に抱かれて
第11章 回りだす歯車
いざ部屋の前に着いてみると、夫人が自分を亡き者にしようと考えたほど嫌っていることを思い出し、少し怖いような気持ちになる。
しかし意を決して夫人の部屋のドアをノックすると、「早く入りなさい」と思いのほか明るい声がした。
約二年ぶりに顔を見た夫人は、ベッドに腰を掛け、二年という月日以上に疲れ果てた様子で、痩せて見えた。しかし、顔色はいい様だ。
「まあリュヌは……元気そうなのね。あの学園がそんなに楽しかったのかしら」
まるで遊んでいたと言わんばかりの夫人だったが、自分がどれだけ慎ましく、そして精神的にも苦しい毎日を送って来たのかなど話すつもりがないリュヌは、黙って頭を下げていた。
「学園では様々なことを学ばせて頂きました。ありがとうございました……」
夫人にとってはあまり話題にしたくない筈のドゥルーのことには触れない方がいいだろう、そう思ったリュヌだったが、夫人は何でもないことのように切り出した。
「ドゥルーが腰抜けで、あの薬を使わなかったのは都合が良かったわ」