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影に抱かれて
第13章 再生
そしてあの塔の女は、いつの間にか姿を消していた。
あの女のことだけがリュヌの密かな気がかりだったが、忽然と姿を消してしまった女のことをそれ以上知ることは出来なかった。どんな時も堂々とした態度のジュールだったが、あの女との関係についてだけは話題を避けているような節があった。
あの女はどこへ行ったのか……そしてあの女は誰なのかを考えるとリュヌの胸は苦しくなったが、きっと淫売の類だったのだと……
そこに愛などは無かった筈だと自分を慰めていた。
以前のジュールが戻り、女も消える……それは、夫人の思惑通りの展開の筈だ。
自分を呼び戻したことは正解であったし、そのおかげとも言える一連の出来事だったが、夫人が自分に対してとる態度は相変わらず冷淡なものだった。
夫人にとって、使用人が自分のために動くのは当然のことであったし、用が済んでしまえば今度はその存在自体がまた、邪魔なものに変化してしまっているのかもしれなかった。