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影に抱かれて
第13章 再生
そんなある日、夫人はジュールを新当主として正式にお披露目する午餐会を催した。
その日はあいにくの雨模様で、どのくらいの人数が集まるのかと朝から気を揉んでいた夫人であったが……それは杞憂に終わった。
気付けば屋敷のエントランスホールは多くの客で溢れ返っていたのだ。
それは、フランクール家の威信がまだ保てていた証拠であったし、新当主ジュールへの期待の表れでもあった。
招待客は亡くなった伯爵と親交のあった伯爵家の人間だけにとどまらず、そこには有力な侯爵家までも含まれていて、中でもモンフィール侯爵とその美しい令嬢の姿は気品に溢れ、その場にいるものは皆ため息をついて二人に見入っていた。
本来なら主役であるジュールがここで視線を集める筈なのだが……未だに自由なところがあるジュールはどこかに姿を消している。
午餐会が始まる時間に戻れば大きな問題ではなかったが、しかしそのことが意外な状況を生み出していしまっていた。
今このエントランスで、侯爵父娘以上に最も人目を引いていたのは……思いもかけない人物。リュヌだったのだ。
人手が足りないと聞き、リュヌは手伝いのためホールに駆けつけて来ていた。