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影に抱かれて
第13章 再生
侯爵家のお嬢様との縁談……そんなものをジュールが望まないことは、屋敷の人間なら誰でも分かることだった。
モンフィール侯爵を招いたこの場でいきなり発表をしたことは、ジュールがどんな人間なのかを夫人が全く理解していないことの表れだった。黙って従うはずがないのだ。
「勝手に決めてくるなんて……フランクール家の当主はこの僕なんです。全く行儀の悪い母上だ」
「ジュール! なんてことを……だって貴方はまだ15なのよ! 親が子供の縁談を決めて何が悪いの?!」
来賓たちの前でヒステリックに声を荒げる夫人を見て、ジャンは慌ててリュヌを呼んだ。
「お二人を別室へ……なるべく遠くの部屋へお連れするのじゃ。ここはわしが何とかするから……リュヌ、頼んだぞ」
それまで呆然としていたリュヌだったが……フランクール家の一大事にそんなことを言っている場合ではなかった。
めでたい席であるはずの今日の午餐会はもう台無しだった。この場をとりなさなければいけない立場のジャンも、モンフィール父娘のもとへと走り寄って行った。