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影に抱かれて
第13章 再生
控えの間に移り、リュヌは何とか夫人をなだめようと試みる。
「奥様、ご気分は悪くありませんか? お、落ち着いて下さい」
しかし、その言葉は夫人の怒りにさらに火をつけていた。
「気分が悪いかですって?! そもそもお前のせいじゃないの! いつまでここにいる気なの? ジュールは侯爵家と縁組をするのです。今度こそ、お前みたいな卑しい人間が気軽に話し掛けていい相手ではなくなるのですよ!」
「リュヌを侮辱するな!」
依頼通りの結果を出し、ジュールに当主としての仕事に励ませることに成功したリュヌに、もう大きな事は言えなくなったのだろう……そうジュールは思っていたようだが、甘かった。
夫人は今日のこの機会をただ狙っていたのだ。
ジュールの瞳が燃えている……リュヌはそう思った。
何とかしなくてはいけないと、そんな不安がリュヌを襲う。婚姻で、恋人ジュールを失うのはもちろん辛い。しかしリュヌは自分が使用人であるという事実を忘れてしまうほど己惚れてはいなかった。