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影に抱かれて
第14章 滅びる運命
「……イネスですよ。貴女の里から輿入れの時に連れて来たメイド……そして、貴女が出産後に死にかけていた時に、父上との間にこっそり子をもうけた…………リュヌの母親のイネスですよ」
イネス……イネス……イネス!
その名前は彼女にとって思い出したくもないものだった。
ジュールを出産後、体調を崩していた自分を献身的に看病してくれていたはずのイネス。
里から連れて来たメイドで、とても信頼を置いていた。なのに……ちょどその同じ時期にイネスはリュヌを身ごもり、里下がりと嘘をついてこっそり出産していたのだ。
主がメイドに手を出すことなど珍しくはなかったが、どうしても許すことができなかった。
生まれたばかりのリュヌだけはフランクール家のものとすることにして、イネスのほうは着の身着のまま放逐した……筈だった。
死んでも構わないと思っていたし……いっそ死ねばいいとさえ思っていた。
それが生きていて……何がどうなったか分からないが、自分の大切なジュールといかがわしい行為を何度も……何度も。