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影に抱かれて
第14章 滅びる運命
「滅びる運命にある者は、その前に高慢になる。そして、高慢は没落の前に来る……」
「何? 何を言っているの? 」
窓から身を乗り出す夫人の目に、木立の中に佇む人影が見えた気がした。
いや、それは夫人の嫉妬心が見せた幻なのか……
「聖書の言葉ですよ。知らなくても無理はない……貴女の心にも神はいませんからね。僕と同じように。父上は……父上はどうだったのかな。懺悔ならしていましたよ」
とりとめもなく変わるジュールの話に、夫人は言い知れぬ不安を覚える。
もっと話を聞こうと振り向くと……目の前にあったのは愛する息子の手の平だった。
「父上は侮辱したんだ……僕らの関係を。僕がリュヌに対して感じる愛は、血の繋がりが見せる幻想だって……自分の昔の罪を告白してね。それを聞く僕の気持ちなんて何も考えていなかった。そしてさらにリュヌがもう死んでしまったなんて……そんな愚かな嘘を。それを信じた僕はああするしかなかったんだ……こんな風にね」
打ち付ける雨、そして稲光に浮かび上がる塔……
そしてその塔の窓から、夫人の身体が宙に……舞った。