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影に抱かれて
第15章 その、白い手
夫人の遺体を最初に発見したのはジャンだった。
激しい雨の中、屋敷の裏口から夫人が飛び出していくのを見た使用人がいて、皆でその行方を捜していたのだ。
「ああ、母上……僕が、僕が結婚しないなんて言ったばかりに……あんなところから身を投げてしまわれるなんて……!」
屋敷の部屋で、布が掛けられた夫人の亡骸にしがみつき……ジュールが声を限りに泣き叫ぶ。その痛々しい姿に、リュヌは掛ける言葉を失っていた。
「まさか、あの塔に上るなんて考えられなかった……後を追ったのに、森の中で見失ってしまったんだ……ああ、僕のせいだ……僕の……」
すると、混乱した様子のジュールにジャンが静かに語りかけた。
「お湯を用意させております。まずは身体を温め、よくお休みください……リュヌ、部屋にお連れするんじゃ」
ふらりと立ち上がったジュールを支えるようにしてリュヌは部屋を後にする。
そして、ジュールの部屋に着くと、メイドたちが忙しく動き、普段あまり使わないバスタブに湯が張られていた。