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影に抱かれて
第15章 その、白い手
リュヌはジュールのための温かいミルクをメイドに頼むと、入浴が終わるのを待つことにした。
様々な考えが頭を巡る。
夫人があの塔に一人で上るなんて……確かに考えられない。こんな恐ろしいことが起きるなんて……
伯爵に続く、夫人の突然の死。
フランクール家の新しい出発の日になる筈だった晴れの日に、このような事態を招くとは……この家の未来にも暗雲が立ち込めているかに思える。
しかし、ジャンであれば何とかしてくれるのではないかとも思う。彼は人生すべてをフランクール家に捧げ、敬愛していた伯爵と再建したこの家は、彼の守るべきすべて……生き様そのものの筈だからだ。
リュヌは大きなため息をついた。
「やあ、リュヌ。待っていてくれたんだね」
風呂で温まったジュールの頬には赤みが刺していた。
「ミルクを温めたよ、ジュール。飲んで……早く休んで」
「ありがとう……リュヌ」