この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
影に抱かれて
第17章 影に抱かれて
ああ、ジュールを裏切るなどとても出来ない……
だってこんなにも愛している。
ジャンはジュールを悪魔だと言う。
しかしあの、ジュールからの手紙……リュヌを失ったと知った時の、荒れ狂うような深い悲しみが溢れた言葉を……悪魔が綴るとはとても思えない。
いつだってリュヌはジュールの深い愛情に包まれてきたのだ。
それに、たとえ悪魔だとしても……
ジュールを苦しめるなどリュヌには考えられなかった。
――良い木は良い実を結び、悪い木は悪い実を結ぶ――
計画の話をする中で、ジャンは何度も自分に言い聞かせるようにその聖書の中の言葉を使った。
夫妻を失ったジャンにとって、敬愛する伯爵が残したこのフランクール家は命を懸けて守るべき唯一のものになっているのだろうが……
ジュールは本当に悪なのだろうか?
そしてジャンに手を貸そうとしている自分は善なのか?
リュヌには分からなかった。