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影に抱かれて
第1章 月夜の贈りもの
「ほ、本当に行くの……?」
「何? もしかして……怖いの?」
「そんなこと……!」
震える声を隠すようにリュヌは思わず口ごもる。
真っ暗闇の中でもその金色の髪は仄かに浮かび上がり、澄んだ青い瞳は闇夜を吸って不安げに揺れていた。
しかし、ジュールに隠し事など出来る筈がない……そう思い直してリュヌは素直に認めることにした。ジュールはひとつ年長なだけなのに、自分の考えていることなんていつだって見透かしてしまうのだ。
「こ、怖いよ……だって暗いもん……」
「僕がついてるんだから大丈夫だよ。じゃあ、手を繋ごう」
そう言って差し出されたジュールの手。その手は大きく、そして温かく感じられた。
勇気づけるように優しく笑うジュール。
その柔らかい鳶色の髪、そして深い森のような落ち着きのある色の瞳を見て、リュヌは自分の恐怖が少しだけ和らぐのを感じる。
そしてそのまま手を引かれ、塔の周囲にある、今は花のついていない薔薇園を抜けてさらに塔へと近付いていった。