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影に抱かれて
第4章 雲に隠れて
神学校に行けば、ラテン語や作法などの基礎教養はもちろん、法律学なども学ぶことができるのに……そして、勉学をしたい気持ちが強い自分に、ジュールはいつも進んで読み書きを教えてくれていたのに。
「どうして? 僕はジュールの役に立ちたいんだ。旦那様にも恩返しがしたい……立派な人間になりたいんだ」
しかしジュールはリュヌの両手を握りしめ、その場に跪いた。
「学校に行ったら4年は戻れない。それに母上は……リュヌをこのままどこかへやってしまうかもしれない。僕には分かるんだ。そうしたらもう会えなくなるんだよ? 」
そういう可能性もあるかもしれないことはリュヌにも理解できた。しかし頑張れば、もしかしたら……。
それに、こんなチャンスを逃す人間などいないように思われた。少なくとも、こんな身に余るような話を断るなどという大それたことはとても想像ができないリュヌだった。
「ぜひ戻ってきて欲しいって言ってもらえるような……そんな人間になるから。勉学をすごく頑張るから……僕は行きたいよ、ジュール……」
ジュールの目を真っ直ぐ見下ろして話すリュヌから目を逸らし……そしてリュヌの腰に顔を埋めながら話し出すジュールの声は震えていた。