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影に抱かれて
第5章 甘く、苦い……
「……ジュール……」
この想いは届くだろうか……
使用人を振り切ってジュールが走り出すのを見たジャンが馭者に合図を出すと、ジュールが馬車に追いつくことはもう叶わない。
窓から出した顔を涙で濡らすリュヌと、道端に崩れ落ちるジュールの背中を見るジャンの顔には憂いの表情が浮かんでいた。
「学園で厳しい毎日を送れば、気も紛れるだろう。そして遠く離れて暮らせば、ジュール様も……行き過ぎた関係のことなど忘れてしまう筈だ。そうでなくてはいかんのじゃ……」