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影に抱かれて
第6章 ケージ・エピネ
そのリュヌの顔に、ランタンの灯りが無遠慮に近付けられる。すると感情の色が無かった修道士の顔に、侮蔑の表情が確かに浮かんだ。
「泣きはらした目をして……そのように甘えた心ではもちませんよ」
リュヌの容姿から、金持ちの我儘な坊ちゃんだと思ったのかもしれない。そしてランタンを壁の鉤に掛けると、バッグを持っていないリュヌの身体を服の上から順番に調べていった。持ち物検査だ。
リュヌが待っていたのは、ジャンがくれた心づけと、何よりも大事なロザリオだけ。ジュールにもらったあの大切な教本でさえ置いて来ていたのだ。
それなのに、修道士はその二つをいとも簡単に取り上げてしまった。
「ま、待ってください……! それは大切な物なんです。それに、何にも持ち込めないなんて嘘です……!」
いつもなら初対面の相手に自分の意見を言うことなど考えられないリュヌだが、抗議の言葉が思わず口から飛び出してしまう。持ち物に厳しいとはジャンから聞いていたが、全て駄目だとは聞いていなかったからだ。
しかし、修道士は全く相手にしてくれなかった。