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影に抱かれて
第6章 ケージ・エピネ
「誰から何を聞いて来たか知りませんが、規則は規則です。さあ、手続きなどは明日になるので今夜は早く部屋に入り休むように。起床時刻は三時半ですよ」
「さ、三時……はい……」
屋敷で生活していた頃から、薔薇の世話のために明るくなる頃には目覚めていたリュヌだったが、三時半とはさすがに驚いた。早く部屋に行って就寝しなくてはいけない……初日から寝坊をする訳にはいかないだろう。
彼の後ろを歩いて、学園の庭を進む。
灯りは無く暗かったが、月明かりのせいで問題なく歩くことができる。上を見上げると、大きな建物からは灯りが殆ど漏れて来ず、やはりもう就寝時間は過ぎてしまっているのだと思いながらリュヌは歩いた。
『二号館』と書かれた蔦の絡まる煉瓦造りの大きな建物に入ると、中は真っ暗で……ランタンの灯りだけでは長く続く廊下の先の方は全く見えなかった。部屋は二階らしく、真っ暗な階段をリュヌは彼の後ろにぴったり着いて上った。
何も分からないことが不安だったが、修道士の背中は質問など一切を拒否しているかのようだった。そして廊下の真ん中あたりの部屋のドアを開けリュヌを中に入れると、すぐに眠るようにとだけ言って彼は立ち去ってしまった。