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影に抱かれて
第8章 心のままに
それはジュールの心の叫びだった。
リュヌは居ても立ってもいられなくなった。
手紙の日付は一年前だ。それから一年経って……今ジュールはどうしているのだろう……
夫人に申し訳ないという気持ちはもちろんある。しかし、ジュールを想う気持ちは何よりも強かった。
――やっぱり帰ろう、あの懐かしいお屋敷へ。
ドゥルーの存在など忘れ、そのまま走って屋敷まで帰りそうな勢いのリュヌをドゥルーが優しく押しとどめる。
その手には学園に到着した時に取り上げられたあの、ロザリオとジャンからの心づけが入った袋が乗せられていた。
「夫人はもう、休学の手続きをしてしまったみたいだよ。事務局からこれを預かって来た。馬車も用意されているみたいだ……」
すぐに出発できるのなら他のことはどうでもいい。
リュヌはドゥルーの目の前でシャツとズボンに着替え、来た時と同じように、ロザリオを首にかけ、ポケットには心づけだけをしまった。
「ありがとう、ドゥルー」
あまりにも突然、自分の前から去ろうとしているリュヌを見て、ドゥルーの顔には寂しげな笑顔が浮かぶ。
先ほど、愛を告白したばかりだというのに……。