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影に抱かれて
第9章 待ち受けるもの
二年前のあの日とは何もかもが逆だった。
早朝に学園を出て、フランクール家の屋敷に向う。多分、夕刻には到着できるだろう。
見送りをしてくれる人の無いまま、馬車は静かに走り出す。ドゥルーとの別れは寂しかったが、やはり身を切られるほどの感情は湧いてこなかった。
今度は途中で眠ったりしない。
窓の外を流れる景色をしっかりと目に焼き付けながら、リュヌが考えているのはただ、ジュールのことだけだった。
今、この瞬間……ジュールはどうしているのだろうか。
自分は生きているよ……と、ジュールのことを一瞬だって忘れたことはなかったと伝えたい。神への愛を前にひた隠しにしてきたその想いだったが、もう隠しきれない。
とにかく、会いたい……