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影に抱かれて
第9章 待ち受けるもの
到着はやはり、日がすっかり沈んでからとなった。
暗闇のせいで、懐かしいフランクール領の景色は全く見ることが出来なかったが、その雰囲気というか匂いのようなものは無性に懐かしく感じられた。
そして見えて来たあの背の高い塔……
月の光を受けて鈍く、青白く輝く塔を見た途端……リュヌの心にはあの懐かしい祭壇や、ジュールと一緒にそこで過ごした輝かしい日々が蘇ってきた。
また、ジュールとあんな時間を過ごすことができるだろうか……
夫人との対面や、死んだことになっていた自分がどう屋敷に受け入れてもらえるかなど気にかかることはあったが、今はとにかくジュールに会いたいと強く思う。
そして門の前に立ち、大きく息を吸ったところで……奥の暗闇からランタンの灯りがゆらゆらと近付いてくるのが見えた。