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ハツコイ♥アゲイン
第9章 もうひとつの再会
絞り出すように陽向が発した、その名前。
私の身近な知り合いには居ない。
だけどどこかで聞き覚えがあるような無いような……
……だめだ
頭が真っ白で何も思い浮かばない。
「彩」
彼が彼女の名を口にするだけで、ドクンと心臓が大きく跳ねる。
不思議と周りの喧騒が消えて
私の目には2人の姿しか映らなくなる。
……陽向が人を掻き分けて近付いていく、その先で
陸橋の手摺に手を掛けて、体を預けていた女性が……顔を上げた。
「……えっ……?」
ラベンダー色のシャツの上に、羽織ったストールと
やや前下がりのボブが、ふわっと風に揺れる。
「── 陽向……?」
透き通った声で、名前を口にした彼女が
驚いたように大きく目を見開いた。
……どくん、どくん
不穏な鼓動が重く、早くなっていく……