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第10章 5年前の恋心

……翔太さんは
お兄ちゃんと陽向の、大学時代の友人。

そして……
お兄ちゃんが居なくても、実家によく遊びに来ていたから

彼女の名前を聞いた記憶があることを、思い出した。



── 彩、と陽向が呼んだあの人は

翔太さんの奥さんだ ──



「お兄ちゃん、教えて」


注がれたグラスの中で揺れる、細かい泡を見つめる。


「私と別れて、スペインに行った後も
陽向は何度か日本に帰ってきていたんだよね？」

「………！」

「帰省した時は
お兄ちゃんや、他の友達のみんなとも、会っていたんだよね？」


別れた後の陽向の情報や動向は、自らシャッターを閉めて遮断してきた。
そんなあからさまに頑固な私に……周りは皆気を遣い黙ってくれていた。

だから

空白の７年間を……私は知らない ──



“ ……いいかげん俺も、吹っ切らなきゃいけねぇしな ”



「── 陽向は、彩さんが好きなの……？」