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第9章 カイ（年齢不明）

　その日から、出会い系サイトを開くことはしなくなった。翌週末は予定通り服を買いに遠くのショッピングモールへ出かけたけれど、残りのボーナスである五万には手をつけなかった。
　そこまで服に散財するつもりはなかったし、今月の給料で充分足りる。わざわざ残りのボーナスをつかってしまう必要もないし、だからと言って特別な使い方ができるほど残ってもいない。封筒に別にしたまま、部屋の引き出しにしまってあった。
　その日はコートとセーターを買った。
　出会い系サイトを開かなくなって数週間ほど。時々無性にヤりたくなる時はあった。動画や妄想で自慰にふけっても、男の子たちを責めていた時のような高揚はない。物足りなくて結局途中でやめてしまうことが多かった。
　そんなある日、出会い系サイトからeメールが届いた。ただのメルマガだ。一瞬だけ心が揺らぐ。
　けれどあの時の衝動を思い出すと、また違う子を誘ってセックスしようとは思えなかった。

「退会しちゃうか……」

　退会して、残りのボーナスも使うかATMに入れてしまおうと決め、あたしは久しぶりに出会い系サイトを開いた。