この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ドラスティックな恋をして
第2章 家族の巣立ち
住み慣れた家でのんびりと、一人気ままに一日を過ごす。
最初の1ヶ月ほどは味わった事のない自由さに、
なにをするわけでもないのに楽しさを感じたが、それもしだいに飽きてきた。
なにか・・趣味でも探そうかな・・
ここまでなにかの習い事をすることもなかった。
パートに出ることもなく専業主婦でここまできた。
時々、ハンカチだとか布小物の縫製の内職を頼まれると
引き受けるくらいの仕事しかしていない。
依子にとって、夫と息子のために家事に手をかけることが一番の仕事だったのだ。
その仕事がなくなって、時間も気持ちも持て余すと、
なにかないかと家じゅうをひっくり返してみた。
その時見つけたのが、押し入れの中のギターだった。
高校生の頃の青春の思い出が顔をのぞかせた時、
依子の表情は暗い押し入れの中で明るく開いた。
ずりずりと引きずり出して、蓋を開けて手に取った時、
とにかく傍らに置いておきたい、と依子の心を弾ませた。
楽しかった記憶をこじ開けてくれた、このギターを。