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ドラスティックな恋をして
第5章 懐かしさの理由
腕時計に目をやると、いつの間にか5時をまわっていた。
2時間以上もこうしてここで初めてお茶をする男とのおしゃべりに夢中になっていた。
「今日は楽しかったよ。ね、今度はカラオケボックスに行こうよ」
「え?カラオケ?私カラオケ好きじゃなくて」
「歌いに行くわけじゃなくてさ、カラオケボックスなら楽器弾いても大丈夫でしょ?
そこでなら教えてあげられるじゃない?」
「いやでも別に・・そこまでしてもらわなくても・・」
今の依子の正直な気持ちは、もうギターはどうでもよくなっていた。
部屋の中に居場所を作り絃も張り替えて、息を吹き返らせたギターよりも
この吉本昌宏という男のほうが気持ちを引っ張っていった。
物よりも、生身の人間の放つ魅力は、力強く依子の心を掴んだ。
「じゃあどうして今日ここに来たの?買う必要のない音叉を買うなんて言ってさ。
やっぱりオレに会いに来るのが目的だった?」