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ドラスティックな恋をして
第6章 夫という現実
気がつくと新幹線は軽井沢の駅をゆっくりと滑り出していた。

新緑が風に揺れて、電車の中までは木々の香りは届かないはずだが、
何故か大きく息を吸い込みたくなった。


・・そうだ、吉本さんに・・

昌宏にメールをしようと膝の上のバッグから携帯電話を取り出した。

内容はたわいもない事。
よく若い子たちがやっている、特別な用事ではないけれどなんとなく携帯を開き、
誰かと繋がる。
その程度の、たわいもない事。
今新幹線の中だとか、夫のところへ行ってきたとか、信州の空気は澄んでいた、だとか。
そして最後にはまたお会いしましょうという一言を添えた。
具体的にいつとは書かなかったが、
その「いつ」をあの吉本昌宏は示してくれると期待している。

あの瞳・・
前に進んでいくことしか考えていないような、あの力のある瞳には、
社交辞令のような曖昧さは似合わない・・


窓の外は夜の闇に染まり、遠くに家々の灯りが瞬く。
いつ返信がくるか、と手の中に携帯電話を包んだまま、
黒い景色の中に増えていく灯りを、見つめ続けた。



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