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ドラスティックな恋をして
第8章 恋の泥沼
電車の振動が体を揺さぶるたびに、昌宏の体の振動が思い出された。
汗ではりついた肌の温もり。
唇を割って入ってきた舌の温かさ。
どれを思い出しても体はヒクヒクと脈を打つ。
情熱的な愛し方だった。
悟志とは違うおだやかさ。
体を開かれるたびに声をあげた。
・・オレは依子さんが好き・・
その時の昌宏の目が頭から離れない。
声が耳から離れない。
夫がいる身でありながら、それでも愛してくれる男がいる。
女であることの喜びに浸る半面で、罪の意識に目を伏せる。
なぜ、簡単に線を跨いでしまったのだろう・・
悟志を男として見れなくなったわけではない。
今の生活に不満があるわけでもない。
何に対しても嫌な事は無いのに・・
しいて言うなら、一人の寂しさ。
自分で選んだ生活とはいえ、夫や息子の世話を焼くこともなくなって、
持て余した時間が生み出した自由と孤独に惑わされたのかもしれない・・
また・・会いたいと思った。
また愛されたいと思った。
イケない事だと自覚しながら。
窓から見える、多摩川の川面が黒く揺らいでいる。
恋の泥沼はきっとあんな色だろう、と窓ガラスに顔を近づけ、
これから自分が身を投じる闇の色を瞼に焼き付けた。